オフィスにとらわれず社外で仕事を行う「テレワーク」は、昨今の働き方改革を推し進める上で大きな意義をもっています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、そのメリットが見直されつつあります。
そんなテレワークにも、もちろんデメリットはあります。
メリット、デメリットの両方を理解し、メリットを最大限活かせるテレワーク体制を作りましょう。
今回はテレワークの基本を知りたい方向けに、テレワークのメリットやデメリットを解説します。
様々な面で無視できないテレワークのメリット
まずテレワークのメリットについて復習しておきましょう。
- さまざまなコストの削減につながる
- 場所やプライベートの事情などに捉われず、優秀な人材を確保できる
- 労働生産性が上がる
- 事業継続性が確保される
- ワークライフバランスが実現する
それぞれについて、一つずつ確認していきましょう。
さまざまなコストの削減につながる
企業にとって、社内で発生するさまざまなコストの削減は経営の改善につながります。
テレワークを導入して普及させることによって、次のようなコストを削減して利益へ回すことができるようになります。
- 賃料
- 交通費
- 光熱費
また、副作用的な効果として、テレワークを導入することによって社内をペーパーレス化することにつながります。なぜ紙が減るかというと、テレワークによってオフィス外で仕事をするために、紙で管理していた資料をデジタル化する必要があるからです。ペーパーレス化を推し進めることは長期的なコスト削減に直結しますし、様々な業務の生産効率を上げることにもつながります。
場所や個人の事情に捉われず、優秀な人材を確保できる
オフィス出社を必須とするこれまでの働き方と比べると、テレワーク導入企業には、人材確保の面で次のようなメリットがあります。
- 場所を問わず優秀な人材を確保できる
- 障がいでオフィスに出社できない優秀な人材を確保できる
こうした人材は、たとえ優秀でも、オフィス出社が前提では雇用することが難しかったのですが、テレワークを導入すれば、場所に関係なく柔軟な働き方ができるようになるので、ほかの人と同じように働いてもらうことができるようになります。場所や個人の事情に捉われない、さまざまな優秀な人材を確保できるわけです。
子どもが育てながら定時通勤が難しいために退職したり、最近では、優秀な人材が家族の介護のために離職を選ばざるという「介護離職」も増えています。テレワークはこのような人材の離職を避けることができるため、新規採用コストを減らすことができます。
労働生産性が上がる
総務省が発表している「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究(平成29年)」では、テレワークを導入している企業とそうでない企業の成長性を比較しています。
それによれば、テレワークを導入している企業は、テレワークを導入していない企業よりも業績が増加しているそうです。
古きよき昭和的な感覚にとらわれ、「テレワークを導入すると仕事をしない人が出てくるから生産性は下がるのではないか」と思っている方は、ぜひ認識を改めてほしいと思います。
テレワークは企業の成長にも、よい影響を与えるのです。
事業継続性が確保される
新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの企業が、みんながオフィスに集まって仕事をする体制では事業を継続できないという問題に直面しました。社内の仕事が滞ると、クライアントにも迷惑をかけてしまいます。
感染リスクを減らして事業を継続させるには、従業員が各自テレワークを行う体制が必須になりました。テレワークによって新型コロナの影響を受けつつも事業継続性を確保することで、クライアントからの信頼も確保できるでしょう。
新型コロナウイルスに限らず、災害などの発生に対してもテレワークは有効なのです。
ワーク・ライフ・バランスが実現する
そもそも、ほとんどの従業員にとってオフィスに決まった時刻に通勤することは苦痛でしかありませんでした。毎日会社へ行くだけで、疲れ果ててしまう方も多いでしょう。育児や介護などで時間のない生活をしている人にとっては、とくに大きなストレスであり、時間のムダです。
テレワークの導入は仕事とプライベートの両立、つまりワーク・ライフ・バランスを実現することにつながります。家でやるべきことをしながら、安心して仕事ができるようになるのです。
良いことばかりではない、テレワークのデメリット
さて、良いことばかりでなく、テレワークを行うことによるデメリットについても考えてみましょう。
- コミュニケーションを取ることが難しい
- ちゃんとルールを定めないと、長時間労働になるおそれがある
- セキュリティリスクが増大する
テレワークには上記のようなデメリットがあります。
それぞれ説明しましょう。
コミュニケーションを取るのが難しい
テレワークは個々の従業員がオフィス以外の好きな場所で仕事するわけですから、オフィスで交わしていたような気軽に世間話や、仕事に関する些細な会話を行うことは難しくなります。こうしたコミュニケーションは決して「ムダ話」などではなく、仕事の生産性を向上させる上で大きな役割を果たしています。人と相談せずに仕事をすることでムダな作業に没頭してしまったりということもあるでしょう。メンタル不全の心配もあります。つまり、コミュニケーション不足は仕事全体の生産性を下げてしまう可能性があるわけです。
そういったコミュニケーションを補完するには、Web会議ツールなどの導入は有効です。Web会議ツールを使えば、面と向かってインターネット越しに会話ができますので、上司が状況を把握したりするにも役立ちますし、迷ったときに相談したり、一人で仕事をしているという孤独感を紛らわすことにもなります。
ルールを決めていないと、長時間労働が発生する危険がある
テレワークは周囲に同僚や上司がいるオフィスとは異なり、始業時間や終業時間を自分で管理することになります。すると、真面目な人ほど、「この仕事は最後まで終わらせないといけない」という意識から、朝から深夜まで仕事をしてしまうことになりかねません。逆に、従業員を管理する上司の側も、「ずっと休んでいるのではないか」と疑心暗鬼になりかねません。
そのような長時間労働の問題が発生しないよう、テレワーク導入に際しては、あらかじめ労働時間のルールを決めておきましょう。社内システムにアクセスできる時間帯を設定しておくというのも有効な方法です。
セキュリティリスクが増大する
社外で仕事を行うことは、社内の安全な環境での仕事とは異なり、常にセキュリティリスクと隣り合わせです。細心の注意を払わなかったために、うっかり個人情報を漏洩してしまったということになりかねません。
次のような対策を講じることで、セキュリティリスクを最小限にしましょう。
- システムアクセスに関して、複数段階認証を設定する
- HDDやUSBメモリなどにパスワードロックを掛けておく
- 無料の公衆Wi-Fiはなるべく使わない
くわしくは「テレワークで忘れてはならないセキュリティ対策とは」という記事で詳しく説明していますので、合わせて参考にしてください。
テレワークのデメリットを軽減させ、メリットを享受するために
今回はテレワークのメリットやデメリットを解説してました。
テレワークを導入すると、コスト削減や労働生産性向上など多くのメリットがあり、従業員がライフワークバランスを実現できるようになります。
ただし、コミュニケーション不足や長時間労働の問題、セキュリティリスクといった課題もありますので、ルールを決め、ツールを有効活用して、こうしたデメリットを軽減させることが、より良いテレワーク導入のポイントです。